オーナーチェンジ売却

2016年 7月17日

1.オーナーチェンジ売却とは?

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不動産の折込チラシやネット広告を見ると「オーナーチェンジ物件」と書かれているのを目にされることがあると思います。 「オーナーチェンジ物件」とは「賃貸中物件」のことで、売却時において、第三者に賃貸中であり、その物件を借りている方(賃借人)が当面、退去される予定がない売却物件のことです。

つまり、その物件を購入した場合、買主様はそこに住むことはできず、あくまでも賃借人から受け取る賃料を収入として得ることになります。逆に言うと、自分で住みたいと思っている方は買えない、買う意味の無い物件と言えます。
賃借人にとって売却によってオーナーが変わる(チェンジ)ので、オーナーチェンジ物件ということになります。 次項以下で、どうして賃借人を立退きさせられないのか、また、オーナーチェンジ物件の売却では通常の売却物件と比較しどのような点が異なるのかを解説します。

2.「オーナーチェンジ売却」は相場より安くなる可能性有り!?

まず、どうしてオーナーチェンジ物件において、賃借人を立退きさせることが出来ないかという点を解説します。勿論、交渉によって条件次第で立ち退いて貰えることはあるかも知れませんが、一般的には平穏無事に住んでいる賃借人は売却によって立退きを求められても応じてくれないことが多く、また、法律上も応じる必要がないことになっています。

賃借人は、借地借家法や旧借家法という法律によって手厚く保護されており、期限を定めた定期借家契約による場合を除いては、家主から立退きを求められても、退去する必要は無いこととなっています。

法律上は家主に「正当な事由」がなければ賃借人に対して立退きや解約を求めることができないこととなっています。そして、残念ながら不動産の売却は正当な事由に当たらないとされております。
次に、オーナーチェンジ物件の売却は、通常の物件の売却とどのような点が異なるのかを解説します。

売主様にとって一番大きな違いは「通常の物件の売却より安くなる可能性がある」という点です。(但し、ワンルームや一棟収益物件などの元々収益用不動産は除きます) 例えば、70㎡で3LDKの間取りの物件を売却する際に、空家若しくは売主が居住中の場合は2000万円で売れるのに、これがオーナーチェンジ物件として売却する場合には、1500万円でしか売れないという感じです。

「同じ物件なのに何故そんなに差が出るんだ!?」

と思われるかも知れませんが、このような例はざらにあるのです。 通常売却よりも安くなってしまう理由は2つあります。以下、詳しく解説します。

理由①:買っても住むことが出来ないので投資目的の方しか購入しないため

物件を購入される大多数の方は、物件購入後、その物件に住むために買いますよね。ですが、オーナーチェンジ物件は、賃借人を立ち退かせることができないため、購入しても住むことができません。

そうなると、居住目的の購入層はターゲットにできなくなるため、投資目的の方(個人・法人を問わず)が購入層になります。それだけ購入層が狭くなる=安くなる可能性があるという訳です。 また、投資目的の買主はどうしても購入の判断基準を「利回り」で見ておられますが、一般に、ファミリー物件、特に築年数が浅ければ浅いほど、利回りは低くなる傾向にあります。空家の場合の相場で売ろうとすると、利回りが低過ぎて投資家は見向きもしません。

つまり、どうしても売りたければ投資家の期待利回りのところまで物件価格をダンピングするしかないということとなります。 これが、オーナーチェンジ物件が安くなりがちな最大の理由です。

理由②:オーナーチェンジ物件の購入者向けの住宅ローン商品が少ないため

理由①で述べたように、オーナーチェンジ物件の利回りが低かったとしても、最近の超低金利の住宅ローンを組んで購入すれば充分に儲かるのでは、と考える方は多いのですが、残念ながら殆どの金融機関は、自らが居住するための住宅ローンだからこそ、1%を切るような低金利で貸し付けをしているため、オーナーチェンジ物件の購入には、住宅ローンを利用することはできません。

一部のノンバンクや、銀行でもワンルームの購入用であれば、オーナーチェンジ物件の購入のためのローンを取り扱っている場合はありますが、ファミリータイプのオーナーチェンジ物件を購入する為のローンというのは殆どありません。
つまりどのようになるかと言うと、オーナーチェンジ物件の購入層は「現金購入の顧客」が中心になるということです。 500万~1000万のワンルームならばいざ知らず、2000万円以上の物件をキャッシュでポンと買える方はごく稀ですし、そのような富裕層の方は、その2000万円を頭金にして、もっと大きなアパートや一棟収益マンションを買われます。

現金購入の方が買える金額帯でないと売れない=価格が大幅に下がる」

ということになるわけです。
これらの2つが、オーナーチェンジ物件の売却が一般物件の相場よりも大幅に安くなる可能性のある理由なのです。  但し、元々収益用のワンルームマンションや一棟収益マンション・アパート等につきましては、住宅ローン程、金利は低くないですが、収益物件購入用のローンが多数有りますし、購入者層もそもそも投資家となりますので、オーナーチェンジ物件だからといって、価格が相場より下がるという理由にはなりませんのでご安心下さい。

3.オーナーチェンジ売却の進め方

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今までの話からすると、ファミリータイプの物件についてはオーナーチェンジ物件として売却しない方が良いように思われるかも知れませんが、個人的な事情により、どうしてもオーナーチェンジ物件として売却せざるをえないケースというのは往々にして発生します。

例えば、別項目で説明した「ローン苦による任意売却」のケースも当てはまることがありますし、転勤で貸していた持ち家を売却して別の物件を購入したいという「買換え」のケースでも起こり得ます。 できるだけ世間一般の相場に近い価格で売る為にどのように進めて行けばよいのか、答えは一つではありませんが、以下にいくつかの例を挙げておきます。

①ダメ元で賃借人に購入してもらえないか交渉する、又は立退き交渉をしてみる

これらの交渉はご自身で行うのではなく、売却を依頼する不動産会社によって行ってもらうこととなります。 嘘のように思われるかも知れませんが、賃借人の中には、住んでみてその部屋が欲しくなっている方が結構おられまして、今後もずっと賃料を支払い続けるくらいなら購入したいと考えて下さるケースは実際にあります。

引越費用がかからないなどのメリットもありますので、相場より少し安めの条件を提示すれば、トントン拍子に話が進む可能性もあります。(欲しいと強く思っておられる賃借人の場合、相場以上で売れる場合もあります)

また、賃借人には購入の意思は無くても、売主様の売却せざるを得ない事情を汲み取って下さり、一定期間や金銭的な条件次第で、立退きに応じて下さる優しい賃借人もいらっしゃいます。

オーナーチェンジ物件として売却して相場より500万も1000万も安くなるくらいであれば、幾ばくかの金銭的な補償を行って立退きして頂いた方が最終的に売主様の手取りが多くなることもあります。 厳しいとは思いますが、やってみる価値はあるかと思います。

②オーナーチェンジ物件を積極的に購入する不動産会社に買取してもらう

私は、当サイト「URUIE」の中で、「安易な買取には絶対に応じないで」と声を大にして言っておりますが、再販売で転売利益を狙う不動産業者の中には、オーナーチェンジ物件を積極的に購入される会社もいくつか存在しています。

大抵は大手業者で、資金力があるので、現金での購入に支障が全くなく、また、賃借人が入居している間の賃料も事業利益として見込んでくれる会社もあり、結果的に買取価格が、空室の際の業者買取価格よりも高いケースが有ります。
もちろん、あくまでも業者買取ですから、空室の際に一般の顧客に売却するよりは安くなる可能性はあります。ですが、オーナーチェンジ物件として市場に広く売却活動を行っても、そう簡単には売れませんので、まずは売出前に、こういったオーナーチェンジ物件専門の買取業者に買取価格を提示して貰うというのも一つの方法です。

最後になりますが、いずれにしても「オーナーチェンジ=安い」と決めつけて買い叩いてくるような不動産業者に売却を依頼することだけは避けましょう。
売主様のご事情を汲んで、少しでも高く売却できるように全力を尽くしてくれる業者や、あるいはこの項目で説明をした内容をしっかりと伝えて時には「今は売るのを止めましょう」と言える業者の方が信頼できると私は思います。

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