相続による売却

2016年 3月23日
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1.これからも増え続ける相続による不動産売却

不動産等の固定資産を含めた日本人の個人資産は、約2,600兆円と言われており、その半分以上を65歳以上の高齢者が保有しております。これからの10年は、これらの資産が次世代に引き継がれていくこととなります。

この「大相続時代」において、ご自身が親御さんが保有する不動産の相続を受ける立場になる可能性は充分にありますし、予見することもできると思います。

ここでは、実際に相続が発生し、不動産を相続された方や、将来、相続によって不動産を取得することが見込まれる方にとって、知っておきたい情報・知っておくべき情報をまとめておきますので、少しでもお役に立てることができれば幸いです。

2.相続が発生したとき何から始めればよいか?(不動産編)

相続された不動産を売却することがベストかどうかはケースバイケースですが、売却を検討される場合には、大まかに以下のような流れで準備を進めましょう。

① 相続の発生

役所への死亡届、葬儀、各種法要

② 遺産の確認

現金、預金、証券、不動産、動産等、相続人間において遺産分割協議を行うべき遺産の内容を調べます。

不動産の場合には、相続人の方が把握していない不動産も所有されていた可能性があるので、被相続人(亡くなられた方)の金庫や書庫等から権利証や役所からの固定資産税の通知書・納付書等が有るかどうかを探します。また、細かい住所地や地番が分からない場合でも、市役所で「名寄帳」という書類を請求すると、所在地や不動産の保有が判明する場合があります。(当然、判明するのは請求する市に所在する不動産に限ります。)

③ 遺言書の有無確認

被相続人の方が生前に遺言書を作成している場合がありますので、その内容を確認します。自筆の遺言(自筆証書遺言)であれば、住宅内のどこかに大切に保管されているケースがありますので、遺品から探します。また、公正証書遺言を作成している場合は、正本や謄本といった、控えにあたる書類が自筆証書遺言同様、存在しているはずですが、見当たらない場合には、相続人であれば、公証役場にて公正証書遺言が存在しているかを確認してもらうことも可能です。(但し、遺言者が生存している間は検索してもらうことはできません)

ご注意!!:遺品の中から遺言書が発見された場合、遺言の種類によって取扱に注意が必要です。

自筆証書遺言の場合

勝手に開封して中身を確認してはなりません。(5万円以下の過料に処せられます。)必ず、家庭裁判所において「検認」という手続きを受けてください。

公正証書遺言の場合

原本は公証役場にあるため、改ざんの恐れが無いことから、謄本・正本などの控えを発見した場合はすぐに中身を確認して貰っても構いません。

④ 遺産分割協議

相続人間にて、遺産分割協議を行い、不動産を特定の相続人が単独相続するか、相続人間にて共同で相続(共有名義)するかを話合います。ただし、遺産分割協議が未了の場合でも、法定相続によって相続登記を行い売却した資金を法定相続分に沿って分配することでお話合いがついている場合には、遺産分割協議を行わず、売却を開始することも可能です。

⑤ 査定依頼

これ以降のプロセスは、「不動産売却の流れ」のページで説明した内容と同じです。
売り出し」を経て「商談・契約の締結」となります。

⑥ 残金取引・引き渡し

相続物件の場合に大変なのが、引渡し前の「遺品整理」や「動産処分」です。「遺品整理」の専門業者は多数存在しておりますが、「遺品整理」という名目で依頼をするとかなり高いので、単なる動産の廃棄処分業者を探す方が安く済む傾向にあります。被相続人様の大切な遺品をご自分で整理して、その後に不要なものだけ一斉に処分をされる場合には、後者の業者を選択しましょう。

3.相続物件の売却依頼を貰いたい不動産会社のホンネ

不動産会社の多くの担当者は「相続物件の売却依頼が欲しい」と考えています。「相続による売却に強い」と積極的にアピールを展開している業者さんもあります。

どうして、不動産業者は相続物件を欲しがるのか、そのホンネをお伝えします。勿論、全ての会社がそのように考えている訳ではありませんが、私の知る限り、多くの担当者はこのマインドで相続物件の獲得に躍起になっています。

このホンネを知っておくと、お客様の利益を第一に考えていない不動産会社を見分けることができるようになります。

ホンネ①:相続物件(特に共有物件)は売りやすい

「相続物件は売りやすい」というのは分かりにくいので、もう少し突っ込んだ言い方をすると「相続物件は安く売れる」と思っている不動産会社があるということです。

というのは、相続人間の遺産分割の話合いを経て、売却予定の不動産を共有で相続して売却する場合に、「早く売って換金したい」と考えておられる相続人様は結構いらっしゃいます。

また、相続人間で、分割協議の段階で、トラブルになりかけていたケースなどは、更にその傾向が強まります。
こうなると、査定を依頼する不動産業者が、意図的に安価な査定価格を提示してきたり、不動産業者による買取を提案してきた場合、それが適正価格であるかの検討・検証をせずに応じてしまうことになり、被相続人様の遺してくれた大切な財産を投げ売る結果につながる可能性があります。

「相続だから」とか「共有だから」という理由だけで、早く、安く売ろうとする不動産会社には引っかからないように注意しましょう。

ホンネ②:相続物件には大型物件・高額物件が多い

相続によって売却される物件には、比較的大型の物件や査定価格にして高額の物件が多い傾向があります。これは、一般的な一戸建やマンション等は相続した後に相続人の一人が居住したり賃貸に出したりすることも想定されますが、広さが300坪もあるような土地付建物や、一等地にある物件等は、相続人間での再利用や分割も難しいことから、売却して資金化して分配するという方法を取られる方が多いからではないかと思います。

1000万円の物件の取引で得られる仲介手数料は36万円(税別)、1億円の物件の取引で得られる仲介手数料は306万円(税別)です。

さらに、ホンネ①のように資金化を急がれるケースもあるとなれば、不動産会社としては、どうしても相続案件の取得に力が入ってしまうというのは容易に想像がつくのではないかと思います。

番外編:私のホンネ

相続による売却というのは、私個人は「亡くなられた故人の歩みを偲び、感謝をする機会」だと思っています。その不動産には、亡くなられた方の想いや歴史が沢山詰まっているはずです。

相続人の皆様の為に、大切な財産を遺して下さった故人の方に、顔向けができないような売却はしたくないし、するべきではないと思います。

不動産会社としてのホンネ①②が頭によぎっても、この思いは絶対に変えずに相続人様への提案を行いたいと考えております。

4.相続物件の賢い売却方法まとめ

① 相続案件にすり寄ってくる不動産会社にダマされない!

大手だから相続に詳しい、強いということは有りません。

② 処分を急いで安易に安く売ったり買取の提案に乗らない!

一般の方が買いにくい大型案件や高額案件でない限りは、普通の価格以上で売れます。

③ 信頼している税理士の紹介だからといってその不動産会社が信頼できる訳ではない!

税理士の案件紹介には、紹介料の支払いが行われているのが常識です。税理士の紹介だから信用するのではなく、相続人の目線で売却を提案してくれる不動産会社を見極めましょう。

④ 売却による税金や税の軽減措置などについてしっかりと調べましょう!

相続財産の売却には、譲渡所得が発生して税金を納めなければならないケースが多々ありますが、それを知らずに売却される方もかなりいらっしゃいます。また、税制というのは、毎年のようにコロコロと変わりますので、知らない間にそれらの課税を回避する特別措置法が施行されていることもあったりします。(平成28年4月1日より「相続した空き家を売却した場合の所得税の軽減措置」も施行され、一定の要件下で、3000万円までの譲渡所得の控除ができるようになりました)

不動産会社は「私たちは税金の専門家では有りませんので」と逃げ口上を言ってごまかすところが多いのですが、相続による不動産売却を提案しようとするのであれば、こういった関連の税制にも詳しい会社を選んで任せる方が良いと思います。

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